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母親を説得してそろばん塾をやめた話(小3)

小3の時ぼくはとある同級生と仲良くなり、家も同じ方向なので一緒に帰るようになった。話をしていると難しい言葉をたくさん使ってくるので、その度に

「それってどういう意味?」

とぼくは聞くのだった。いろいろ知っていたからすごいなぁと思っていた。

そんな関係がしばらく続き、ひょんなことでぼくの母親がその同級生のお母さんと知り合いになった。その人はいわゆる「教育ママ」であった。ぼくとぼくの母親、同級生とそのお母さんの4人でファミレスに行った時、ぼくは

「ケチャップとマヨネーズ混ぜてポテトにつけるとおいしいんだよw」

と言い、その知識を披露して実際にそれをやることぐらいしかアピールポイントがなかったが、その教育ママはぼくの母親に対し、

「塾に入れた方がいいわよ~、そろばんやらせたほうがいいわよ~、柔道やったほうがいいわよ~」

と自分の息子にさせていることを懸命に吹き込むのだった。それにすっかり感化されてしまったぼくの母親は、家に帰るなり

「とら、○○君と同じそろばん塾に入ったらどう?」


と言ってきたのだった。さらに地元の道場に連れて行かれ、その同級生がほかの子供に混じって柔道の稽古をしているところを見学させられた。

「とら、柔道はどうなの?」

どうもこうもない。痛そうだし、裸足だし、全然やりたくなかった。そして母親は

「とら、塾はどうなの?」

と言ってきた。もうたくさんである。後で書くがピアノも習っていたし、ポピーという通信教育もやらされていたし、週末は英語の家庭教師が来ていたし、スイミングスクールだってやりたくないのに、これ以上習い事を増やされたらたまったものではない。でも母親は同級生の教育ママの影響で、ぼくの習い事を今以上に増やしたいと思っていたらしく

「なにかひとつやりさい!」

と何度も言うのだった。で、そろばんと柔道と塾から1つ選ぶとしたら一番楽そうなそろばんがいいかなと思った。ぼくの同級生も兄弟でそのそろばん塾に通っていたし、教室もぼくの家からすぐのところにあったのであまり負担にはならないと思ったのである。

やることに決めて入ってみるとこのそろばん塾というのがまたインチキ臭くて、おばちゃん向けのパーマ屋の待合室に畳の部屋があって、そこに小学校にあるのと全く同じ机と椅子を四角に並べて、真ん中のスペースに講師が立ち、ちょこちょこ回ってそろばん指導をするというところだった。生徒は小学生と中学生だけで、ぼくと3つぐらい上のそのパーマ屋の娘、その子と同級生でぼくの家の隣に住んでいた女の子、母親がピアノの先生をしているところの息子兄弟、ぼくの同級生の兄弟、小さな小学生が数人、という具合であった。

しかしそろばんでもやり始めると面白くなるものである。

「なんだいこんなもの、簡単だい」

足し算引き算、かけ算に割り算、どんどん級が上がって桁が増えて行った。そして途中から暗算なるものもやることになった。しかしこれはちっとも面白くなかった。

「目の前にそろばんがあるのに、なんでわざわざ頭の中だけでやる必要があるの?」

ぼくはそこが全く理解できなかったのである。まあ暗算というものは頭の中でそろばんを思い浮かべ、頭の中で玉を動かして計算できる能力を付けましょう、という趣旨のものなのだが、ぼくはこれをやることが馬鹿らしくなってしまった。するといたずらをしようということになるのである。

ぼくはそろばんの授業ができないようにしたら面白いと思い、教室の電気、といっても普通の民家の居間にぶら下がる傘つきの丸い蛍光管だったのだが、それのグロースターターのうちの1こをずらしておいた。先生が来て電気を付けようとすると、大きな方の蛍光管がつかない。

「あれ、おかしいな? これじゃ暗いよね?w」

そろばん講師はそう言って、おかしいなおかしいなとカチャカチャと電気をつけたり消したりしていた。ぼくは

(もう一個もずらしときゃよかった)

と思ったけれども、

(ああこの人はそろばん以外は全くダメなのだな)

と思うのだった。結局その薄暗い中で授業をやることになった。授業は中止にはならなかったのである。そのことを家に帰って親に話した。ぼくは隠し事ができない性格なのだ。

「なんてことを!」

親はそう言い、次の授業の時にぼくの父親がそろばん塾に乗り込んできた。その時講師は新しい蛍光管を買って持ってきており、交換してもつかないから

「おかしいなぁ」

とやっていたのである。そこにぼくの父親が入ってきて、

「これじゃないですかね?」

と言ってずれていたグロースターターを元に戻すとピカっと電気がついた。父親は

「実はうちの子がこんないたずらをしてしまいまして、すいません」

などと言い出す事はなくそのまま感謝されて帰って行った。

ぼくはこの一件でこの講師がたいしたことない人だと思うようになってさらに見下すようになった。子供会でバスに乗って遊園地に遠足に行くみたいなイベントがあって、そのことがそろばん塾内で話題になったとき、

「おこづかいはおっぱいのところに入れて持って行くんだろ?」

みたいなことをこの講師が小学校高学年の女の子に言っていたのも影響している。さらに、低学年の生徒がそろばんをパチパチやっている時に鼻血を出してしまい、ぼくはテッシュを鼻にちょっと詰めてうつむいてればいいという知識があったが、講師はその子の後頭部をたたき始め、まったく馬鹿な男だとぼくは思ったのだった。また生徒の1人は毎回月謝を滞納しており、ゲーセンかどこかで使ってるんじゃないかと思ったが、講師が毎回催促してもいっこうに持ってこないのだった。この生徒からも馬鹿にされていたのかもしれない。

そんなこんなで暗算もつまらないし、毎回馬鹿らしいし、通うのが本当に嫌になってしまった。どうにかして辞めたい。そう思うようになった。で、母親に

「そろばんやめたいんだけど」

と切り出すと、とんでもないと言うのである。さぼろうかとも思ったが、そろばん塾ではスイミングスクールのように見学して水着を濡らすというような手は使えない。ぼくは嫌々通いながら辞める機会をうかがうことにした。

そんな折ぼくの弟も入塾させられ、ほかの子も入って生徒が増えて教室が手狭になってきた。それから間もなく講師は

「もうちょっとしたらうちの校舎で授業やるから」

と言い出した。このそろばん塾は本校が別のところにあり、そこにはまともな教室があったのである。

「へぇ、それも面白いかもね」

とぼくは思った。移動はぼくがいた教室があるパーマ屋の前から講師が車で運んでくれる。一度その教室に行ってみるとパソコンとかもあってパーマ屋の待合室よりかなり近代的だった。子供だから環境が変わる、それもグレードアップというのはちょっと嬉しかった。

しかし今度はぼくの母親が反対した。

「家が近くだから通わせたのに、車で移動するなんて危ない!」

と言うのである。ぼくはしめたと思った。この母親の気持ちをうまく利用してそろばん塾をやめてやろうと思ったのである。しかも講師は生徒の送迎用にSUVみたいなでかい車を買っており、ここでぼくと弟が一緒にやめたら面白いなと思ったのだった。

企業勤めをしている母親の姉であるぼくの叔母がうちに泊まりにきた時、ぼくはこの叔母に

「そろばんって時代遅れだよね? 今はパソコンだよね?」

と切り出したのだった。叔母は

「そうだね。そろばんなんて今時役に立たないね」

と言う。ぼくも社会人になって思うがまったく不要だと思う。ぼくは脈ありだと思った。その日のうちにぼくは叔母とペアを組んで、子供にそろばん塾を辞めさせる説得を母親に対してしたのだった。ぼくの主張は

「そろばんは時代遅れ。八百屋にでもなるなら必要かもしれないが、今は八百屋だって電卓使う。暗算なんて意味ない」

である。さらに叔母が

「そろばんなんて時代遅れのものをわざわざ車に乗って移動してまでやる必要なんかない。とらちゃんの言う通りだよ」

と後方から援護射撃してくれたのだった。猫を捨てた時のように母親も姉からの意見には耳を貸すようで、やりとりをしばらく続けていたら母親もようやく折れて

「そうだね、わかったよ」

となったのである。そうなれば母親は行動が早い。すぐにそろばん塾に

「車で移動してという件もありますので、辞めさせていただきます」

と電話で一報を入れたのだった。ぼくは嬉しかった。その日はうちの家族と叔母でハンバーグを食べに行った。ぼくはおばとの連携プレイでそろばん塾を辞められたことがとても嬉しかったが、どういうわけかその日行ったレストランのハンバーグはクソまずかった。


それからそろばんは一切やらなくなり、思い出した頃にちょっとやってみたがどうやるんだっけ? となるばかりでかけ算割り算のやり方に関してはその方法すら思い出す事ができなかった。そろばんをやったからといって論理的思考能力がつくわけでもなし、問題解決能力がつくわけでもなし、ただひたすら単純作業の繰り返しなのでこれは脳に悪い。そろばんは計算をするための単なる古い道具である。こんな道具の使い方を小学生が習うなんていうのは全くの無駄である。ぼくは自分の子供にはそろばんは絶対に習わせない。

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