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とらが好きになった女の子(大学2年2人目)

女子専門学校の生徒とは別に普通に留学してくる新入生もいる。こちらの場合長ければ卒業まではアメリカにいるわけで、もしつきあったしてもすぐに遠距離になることがなくて安心だ。そういうこともあってかKというひとつ年が下の女の子を好きになった。

「やたー」

彼女の口癖だった。「やった」の「っ」を抜かすのである。話もよくするようになり何回か遊んで友達4人で近くの中華料理の食べ放題に行くことになった。その時も誘ったら「やたー」だったのでみんなで歩いて店へ。食べている時どうもぼくはKの手首付近にあった大きなほくろが気になってしまい、一気に冷めてしまった。

「まただ・・・」

ぼくはそう思った。今回は女の子のドジではない。体がそうなっているのだから仕方がないことなのに、こんなことがきっかけでも好きでなくなるというのは自分におかしな完璧主義があるからのように思われて仕方がなかった。親友のパラグアイ人にこのことを打ち明けると、


"What!?"

と言われ、どうしてそんなことで嫌いになるんだ? なんかおかしいぞ? という反応だった。自分でもそう思った。でも今回は生理的に受け付けなくなるというほどではなかった為、学食で会ったら2人でご飯を食べたりということは続けて、それなりに楽しい時もあった。

とある日ぼくは

「炊き込みごはん炊くよ~」

とKに言ったのだった。すると

「行く~」

と返事があり、ぼくの部屋に来ることになった。アメリカに留学していると寮のご飯や外食がおいしくない為、自炊をしなかった人もやるようになる。その方が確実においしい為だ。そして寮に住んでいて自炊をする場所や調理器具がないとかなり食に困ることになり、ご飯の誘いがあるとかなりの確率で女の子を家に呼べるのだった。家とは言ってもぼくは大学内のアパートスタイルの寮に住んでいてそこにはキッチンがあったのだった。

Kがやってきて炊き込み御飯やみそ汁などを作って一緒に食べた。楽しかった。そして困った嬉しいことに夜帰らない。ぼくは好きになった女の子を頭では嫌いになっても、体では好きだったのだろう。そりゃあ20歳前後の男でそうでない方がどうかしている。

夜も更けてきて、Kが

「服かして!」

と言うので何枚か出してあげた。お風呂に入るかどうかはぼくは聞かなかった。ドアの向こうでKが着替え始めた。

「見ないで!(笑)」

という声が聞こえた。そしてベッドに入ってたわいもない話をするようになり、AVの話になって

「見たい!」

というのでぼくは

「ダメ」

と答えた。何も持っていなかったのである。あと風俗の話になり、ぼくは先輩から「寝てるだけでいいから楽」ということを聞いていたので、自分では一回も行った事はないくせに

「寝ているだけでいいから楽」

と言ったら

「もっと詳しく教えてー」

というので

「ダメ」

とぼくは言った。そんな感じで話しているうちにKが高校で好きだった先輩の話になり、ここがよかったあそこがよかったということを続けて話しているのを聞いているうちに、Kの胸元に手を回していたぼくはすっかり冷めてしまい、また思ったよりKが小柄な割にはがっしりした肩周りであったので、なんだかどうでもよくなってしまった。

そしてKが寝静まった頃に顔をそっと覗き込んでみたら、どうも山田邦子に似ているような気がして

「うーん」

と思ってぼくも寝てしまった。

朝になって何事もなかったかのように学校へ行く。それから数日経ってぼくはメールでよくわからないラブレターをメールでKに出した。内容は


私があなたに初めて出逢ったのは、日差しが強い中、木が風に揺れ動く夏の日でした。
あなたのその素敵な笑顔は、空っぽだった私の心を優しさ満たしてくれて
(中略)
と思う私なのです。

なお、この手紙は1週間以内に腐ってしまいますのでご注意ください。


最後の1文だけがどうもおかしい。それ以外は文学的でなんとも言えない感じであった。ぼくがこの最後の文を付けてしまったのは、自分が受け入れられないことが怖かったからだと思う。もしだめでも「冗談だよ」で済ませられる。そういう保険のようなものだったと思う。

しばらくしてKから電話がかかってきた。

「すっごい嬉しかった。あんなすごいのもらった事ないし、すごい真剣に考えちゃった。それで本当はどうなの?」

ぼくは「うっ」となってしまった。困った。Kがぼくのことを好きでもそうでなくても、ぼくが好きと言ってそのあと付き合うというようなことがひどく不安で、軽い関係から深くなりたいとは思わなかったのである。だから

「冗談だよ」

と言ってしまった。するとKはちょっとがっかりしたような、そしてふっきれたような感じで一言二言言い、会話が終った。

それからしばらくして、時間がなくて学食で食べられない人向けにサンドイッチのお持ち帰りができる場所があって、そこで偶然Kと会った。ぼくは

「Kって山田邦子に似てるよね?」

と以前思ったことを言ってしまった。すると

「超しょっく」

と言うので、ぼくはしまったなと思った。

「俺、山田邦子のファンなんだけどなー」

と思ってもいないフォローを入れてみたが、フォローにも何にもならなかった。その後Kは大学をやめて帰国し、日本の大学に入り直した。うすうすそういう計画も聞いていたから、離ればなれになりたくないとぼくは思っていて行動が億劫になっていたのかもしれない。


そして数年後にひょんなことで表参道で再会した。彼女は当時のことはなかったかのような話しぶりで、ぼくが当時ラブレターに書いたそのままの変わらぬ笑顔を見せたのだった。

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