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とらが好きになった女の子(中2)

会って謝って本当の気持ちを伝えたい。ぼくの願いです。


恋は突然やってくる。ぼくの場合もそうだった。

中2で同じ部活をしていたCさんを好きになった。いつから好きになったかの記憶はなく、中1の時は毎日部活で顔を合わせていたのに気にもしなかったのだから不思議だ。中1の部活の集合写真を見ても

「あれ~これがCさん?」

という具合だった。おそらく中2で顔つきが変わってそれがぼくのストライクゾーンにはまったということだろう。

中2ともなれば好きな女の子とつきあいたいという気持ちが生まれてきてもおかしくはなく、ぼくはCさんとそうしたいと思うようになった。しかしそこには大きな不幸が待ち受けていた。

時々あると思う。それまで何の友人関係もなかったのに、同じクラスになって急に意気投合して同性の友人ができるということが。ぼくもそういう友人、Z君がいた。ぼくも彼も絵を描くのが好きだったし、2人で色々描いて見せ合って、冗談を言い合っていつも2人で遊んでいた。部活も一緒だったし学校の外でもよく遊んだ。親友というかは悪友みたいになった。

ところが、ぼくが好きになったCさんがこともあろうかZ君にラブレターを出したのである。ぼくは何とも言えない気持ちになり、

「なんでとらのところにこないかなー」

と思った。ぼくはあまりにも幼く、Z君に「じゃあ幸せになれよ」みたいなことは思ってやれなかった。というのもZ君はCさんのことを

「なんなのあいつw」

みたいな感じで小馬鹿にしていて、Cさんのことは全然好きじゃなかったのである。ぼくはZ君がだんだん憎らしくなってきた。ぼくはこんなにもCさんを好きなのに、彼は彼女のことを馬鹿にしてラブレターもぼくにまで見せてきたのである。ぼくが喉から手が出るくらいに受け取りたかったラブレター、それを彼が受け取り、彼がふざけてぼくもそれを読めるという何とも情けなく、切なく、怒りも入り混じった複雑な気持ちになった。

ぼくはだんだんZ君に対してそっけない態度を取るようになったが、彼はそのことにあまり気づいていないようだった。彼はいつもと変わらない調子でぼくに話しかけてきて、「ふざけようぜ」みたいな感じでいろいろ誘ってきた。

そこでぼくはとあることを思いついた。Z君はおふざけ好きだから、彼をうまく丸め込んで「俺はCさんに興味がないからあきらめてくれ」という内容の返事を書かせ、CさんにZ君をあきらめてもらい、その隙にぼくがCさんをゲットするというシナリオである。これですべてが丸く収まるはずである。

面白半分で突拍子もない事を考えてやってしまうのは小さな頃からの癖だが、この時もそれが出てしまった。後でとんでもない事に発展するとも知らずに。

このシナリオとは別に、ぼくはZ君を装って自分で書いた手紙をCさん靴箱に入れておいた。ラブレターなんか出すなよなーという内容である。どうしてこんなことをしてしまったのかと今では後悔しているが、なぜかやってしまった。火で手紙をあぶり、全体的に茶色くするという訳の分からない演出までして。おそらくこの手紙はきちんとCさんの手に渡ったと思う。

それからおふざけのZ君と、Cさんに出す返事の打ち合わせをした。彼はいつもにやにや笑っていて

「どんなこと書いてやるか!w」

みたいなノリであった。ぼくはCさんへの恋心をZ君に悟られないようにしながら、

「そうだなー、○×とかはどう?w」

のような対応で案を練っていった。そしてZ君が手書きで手紙を書き、ぼくがその手紙をCさんに渡す係となった。無論それがやりたかったのである。で、なかなか返事が来ないとぼくはCさんのクラスに

「返事はまだかなー? Zが待ってるよ」

などと言いに行ったりして、Cさんからの返事を待った。そしてCさんから返事の手紙はぼくが受け取った。

「これZ君に渡してね」

とCさんから言われて受け取った手紙。これが自分宛だったらどれほどよかったことだろう。しかし今はCさんとZ君のメッセンジャーボーイとして任務をこなさなければいけない。しかしながらぼくとZ君とはグルなのでCさんの窺い知れない所で手紙の内容を見れてしまう。なんともいえない中2病である。

Z君とは手紙の内容に関して

「ははは、なにこれーw」

などとはしゃいで笑いあうのだった。そんな事を何度か繰り返しているうちに、どういうわけかZ君は自分が書くはずの手紙をもうめどうくさいとかの理由で書かなくなり、ぼくが書く事になってしまった。ぼくはそれが嬉しかった。内容は2人で詰めてぼくが書いてCさんに出す。ということになった。それで彼女の家族のこととか、旅行した時のこととか、だんだんそういう内容になっていって、遂にはZ君はCさんとの手紙遊びは飽きてしまい、ぼくとCさんがZ君抜きで手紙のやり取りをするようになった。そしてついにその時はきた。

ぼくは手紙の中で

「俺はCさんのことが好きなんだぞ~」

と書いた。当時ぼくは自分のことを俺と言えなかったが書くことはできたのであった。それまでさんざん格好つけてきて「ぼくCさんが好きです」じゃ格好がつかないと思ったのと、もう好きで好きでしかたがなく、書かずにはいられなかったのである。

するとCさんは

「私も好きだよ~。髪型とかかっこいいし」

とかいう内容の返事をくれた。ぼくはこの時天にも昇る気持ちになった。それまで何人かの女の子を好きになったことはあったものの、それらはすべて片思いであり、両想いというものは現実的には不可能なのではないかと思っていた。お互いが好きになるなんて信じられなかったのである。でもそれが実際に起きた。ぼくは学校からの帰り道、とある民家の塀の横で

「これが両想いか! こんな幸せな気分は生まれて初めてだ~!」

と有頂天になったのを今でもはっきり覚えている。Cさんとはそれまで手紙のやり取りだったのでなぜかその後もずっと手紙で、返事が遅いなぁと思ったり、塾まで手紙を届けたり(その時はちょっと嫌な顔をされたが)、手紙が増えていく毎日だった。冷静になって考えると、Cさんからの手紙は別の女の子経由で来ることもあったので、ぼくとZ君が使ったのと同じ手法でCさんがぼくをだましたとも考えられなくもない。でも当時はそんなことは露ほども思わなかった。以前Cさんと3年の先輩が噂になったことがあったが、そのことも怪しいとは思わなかった。毎日が楽しかったのである。

授業が終って部活が終ると下校の音楽が流れる。Cさんからの返事の手紙を受け取らない状態でその音楽が鳴ってしまうと

「今日は手紙がこなかったなー」

となる。この音楽こそがぼくが一番好きになったベートベーンのロマンス・ヘ長調である。中学の時は曲について何も知らなかったが、高校生になってからひょんなことで曲名と作曲者を知り、ロマンスなんてあの時にぴったりの曲名じゃないかと感銘を受けたものだ。ぼくがバイオリンを習いたいのはこの曲が弾きたいからである。



話を戻そう。手紙は毎日来る訳ではないし、Cさんからの返信がかなり遅い時も多くなった。このままでは事が進まないと思ったぼくは、当時ちょっとはやっていた誰と誰がつきあってるという噂を流すというやつをやりたくなり、先のZ君をからめることにした。結局Z君と別の女の子がつきあっているということをぼくが言いふらすことで、ぼくとCさんがつきあっているということをZ君がみんなに言いふらしてくれた。ぼくはZ君と○○さんがつきあってます、と黒板に小さく書いたのだった。するとZ君はわざわざCさんのクラスまで行って、黒板にでかでかと

「とらとCさんはつきあってます」

と書いたのだった。このことでZ君との関係はかなり悪化し、何か言われた事でぼくは体育の剣道の時間にZ君に殺意すら覚えた。自分でタネをまいておきながらあれだが、もっと素直に生きられていたらと今ではよく思う。結局Z君には塾で

「お前は嫌いだ」

と言われ、会話はそれっきりなくなってしまった。そんなこんなでぼくとCさんの噂が立ち、部活でも後輩から

「とら先輩とC先輩ってつきあってるんですか?」

と言われ、嬉しかったのだが、実際にはつきあっていないのでもどかしかった。そして例の手紙のやりとりのなかで、ぼくは

「いつからつきあう?」

とCさんに聞いたのだが、彼女は

「つきあうとかは噂がなくなってからにしよう」

と返事を書いてきたのだった。その後は「やっぱつきあえない」があったかどうかは今では覚えていない。というのは、「噂がなくなってからにしよう」もしくは「つきあえない」と書かれたことでぼくは有頂天から地獄に落とされたような気分になってしまい、Cさんを恨むようにさえなってしまったのだ。

これは今思うと条件付きの愛を受けて育った子供にありがちな、自分からの愛が受け入れられないと相手を攻撃して愛を取り返そうとし、相手を嫌いになってみじめな自分を守る防衛反応と反動形成が入り交じったものと思われるが、その時はそんな知識はなく、ただやみくもにやるせなさと怒りに身を任せるしかなかった。

そのままとっておけば青春のいい思い出となったであろうCさんからの手紙もすべて焼いて処分してしまった。つきあっているという噂が立っていることも、嬉しいと思わなくなって逆にこっちが迷惑だというような態度をぼくは取るようになり、最後にCさんと話したのは塾の階段のところだったが、

「うちの親も知ってるし迷惑なんだよ」

とぼくは言ってしまった。それからは本当に心の底からCさんが憎くなり、好きなんていう感情は完全に消えた。実際に母親からは

「あんたは女にだまされるタイプなんだよ」

と言われる始末だった。

表面上は強がってみせたが、次の恋を見つけようというような気には全くならず、ぼくはどうしてこういうことになったのだろうとそのことばかりを考えるようになった。Cさんとの噂が立って嬉しさの絶頂にいた時は、ちょっと成績が下がって先生に呼び出された際

「男女の付き合いは禁止されていませんよね?」

などと聞いていたのに。実際は付き合ってないんだけどね。それが今では最悪の状況である。色々考えた結果、ぼくは次のように考えた。

「Z君の方がかっこよかったからだなぁ」

ぼくは自分がしてきた陰湿なことはすべて棚に上げ、自分がもっとかっこよかったらと、つまり外見のせいにしてしまったのだ。それから顔も髪も足も、いろいろな体の部分が嫌いになっていった。あとで書くが中3の美術の時間の自画像製作は言いようのない地獄の苦しみであった。

その後ぼくは徐々に醜形恐怖というものに冒されていく。それで鬱になってだめになりかけて立ち直ってまじめに生ようとなっていくのだが、あの時どうしてもっと素直になれなかったのか。手紙なんて回りくどいやり方をしないで男らしく口で話していれば。だめならだめで自分を磨く努力をしていれば。ぼくはこの事が後悔でしかたがない。

この一件のあとぼくはしばらく女の子をまともに好きになることはなかった。中学を出てから次にCさんを見かけたのは成人式だった。当時ぼくはそれまでの悪ガキ人生を心の底から反省して、迷惑をかけた同級生に謝って回った。その全員が

「そんなの気にしてないよ〜」

言ってくれたが、ついにその場にいたCさんには話しかけられなかった。目は合ったが、お互い気まずいし、Cさんが「嫌な奴がいた」のような目をしているような気がして話しかけられなかった。ちなみにZ君とは別々の高校に行き、駅で時々見かけてはいたのだが、遂に高校3年のときぼくから謝った。もう気にしてないよとのことだった。

ぼくは大学では彼女ができて普通にしていたが、一人暮らしをしていたある日突然死にかけた。苦しくて苦しくて、死を覚悟した。その時、どうしようもない人間かもしれないが、ぼくという人間がこの世に生まれてきて、迷惑をいろいろな人にかけたかもしれないが、ぼくが生きた証というものをこの世に少しでも残してから逝きたい、そう思って紙とペンを取った。

自分でも何を書くか予想もできなかったが、その書いた事は

「Cさん、本当は好きでした。ごめんなさい。」

であった。当時の彼女はかの字も出てこなかった。次に書いた事は

「みんなありがとう」

であった。その後ぼくは救急車で運ばれて死ななかったのだが、やはりぼくの心の中の一番のわだかまりは中2のこの恋である。もし生きながらえるのであれば、Cさんに好きだった、ひどいことしてごめんねと謝りたい。それだけである。

でその後普通の暮らしに戻って、死にかけた事も忘れてしまったが、今これを書いていて、迷惑がられるかもしれないがぼくの中の決着として、Cさんに会いに行って言えなかったことを言いたいと思うのだった。

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