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涙がかれるまで泣いた時のこと

飼うって約束したのに! 小学生のとらが猫を捨てられて涙がかれるまで泣いた時のお話です。この一件がぼくの性格形成に大きく影響したと思っています。



小学校2年生の下校中のことだった。私の家から少し離れたゴミ置き場近くの交差点に、小さな段ボール箱に入った子猫がいた。しゃがみこんでその猫を触ってみるとかわいくてしかたなくて、私はその猫を家に持って帰ってしまった。母親が猫好きなことと、猫を連れて帰ったら「飼えないよ!」と言われて怒られることも分かっていたが、どうしても見放せなくて連れて帰ったのだった。

母親は猫を見ると予想に反して怒りはせず、「どこからきたの?」と得意の猫好きが出たようで、しばらく猫をじゃらして遊んでいた。でも飼えないといううちの決まりを曲げることはなかった。ただあまりにも猫がかわいいのと冬で寒かったこともあり、一晩様子をみようということになって、明日の朝、庭にまだその猫がいたらうちで飼う、ということになったのだった。

7歳の私はそのことが本当に嬉しくて、「猫明日の朝までいるかなー」「早く明日にならないかなー」と興奮したまま眠りについたのだった。

そして次の日、その猫はどこにも行かずにうちの庭にいたのだった。「やった、これで飼える!」 母親もその猫がかわいくて仕方がなかったらしく、飼うことにOKを出したのだった。まずは足をふいて家の中に入れてあげた。そして家族がいるこたつの中に入れたり、なにかでじゃらしたり、楽しい時間だった。私は毛糸を巻いたものとブロックのおもちゃで毛糸がぶら下がる猫用のおもちゃをすぐに作り、猫がそれで遊べるようにした。

「これから毎日こんな楽しい生活になるんだなー」そう思うととても幸せな気持ちになった。しかしその時はその時間がそう長くは続かないことになるなど予想すらできなかった。

この日は祖母の何歳だかのお祝いがある日で、家族揃って母親の実家がある町まで行き、親戚が集まってどこかで食事をすることになっていた。そこへどういうわけかこの猫も連れて行くことになった。私は嬉しくてしかたがなかった。今日から飼うことになった猫。家族の一員となってみんなでご飯を食べに行くのだ。

会場に着くとその猫は注目をひいた。実は昔母親の実家では猫を買っており、だいたいが猫好きだったので、かわいいねーとみんなで猫を触っていた。祖父も祖母もその猫が気に入り、祖母の肩の上でおとなしく座っていたので、祖父は「この猫は利口だ!」と褒めていた。

そんな楽しい時間もお開きの時間となった。車に乗って家まで帰るのだ。猫も一緒に。

ところがしばらく走った街中で車が止まった。どうしたのかと思ったが、母親が「ここに猫をおいていくよ」と言った。ぼくは何がなんだか分からなかった。猫の入った段ボール箱が歩道の上に置かれ、車が出発した。

私は大声で泣き出した。どうして猫だけおいて行くのか分からなかった。だって飼うって今日の朝言ったのに。私は1時間ほど走っている間車の中でずっとわんわん泣いた。家に帰ってからも泣いた。そして夜遅くまで泣いて、もう涙が出なくなった。その時私は思った。

「あ、涙がかれるまで泣くってこういうことなんだ」

7歳の私はそのことを悟ったのだった。もうどこをどうやっても涙が出てこない。泣けないのだ。つまり悲しくなくなってしまったのである。今日の朝の出来事だ。なかったと思うことにしよう。つらすぎて忘れるしかなかったのだろう。

当時日記をつけて出すという宿題が毎日出ており、私はこの涙がかれるまで泣いたことを書いて出した。家の中を探せばそれは出てくるかもしれないが、もうなくなっているかもしれない。猫を捨ててしまった理由だが、母親が食事の席で叔母の1人から猫を飼うと子供にアレルギーが出ると言われたことが原因だったようだ。この出来事のあと、私は性格が暗い子供にはならず、そのことはすっかり忘れていたように思う。

ただし、心の奥底では深い悲しみ、親への不信感、親に捨てられることへの不安、自分の無力さ、などがかなり鋭く刻み込まれたと思う。今思い返すと、インド行きのチケットを取って6時間後に成田を出るなどの衝動性・行動力は、今を逃すと次のチャンスはないからとことんやりきらなければいけない、と思うからなのだが、この思考の根底にあるのはこの猫の一件であり、大人になった今では、あの7歳の時に持ち得なかった経済力と自由を手に入れたのだから、何かやると決めたならば手段を選ばずに何が何でもやるんだ、という気持ちになるのであった。

もしあの時に戻れるなら、あの7歳の時に戻れるなら、私はすぐさま車を飛び降りるか、次の日に親のお金を盗んで学校を休んで電車で行くか、もっと言えば親の車を運転してでもあの猫を捨てた場所まで死ぬ気になって戻り、何が何でも猫を連れ戻すと思う。

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